麻布競馬場氏の「令和元年の人生ゲーム」読了。
私としては、朝井リョウに次ぐ、「今」を切り取って描く作家と成ったな……としみじみ感心した。タワマン文学として発行された「この部屋から東京タワーは永遠に見えない」から、小説家としてさらに進んだ感じがする。
朝井リョウもとんでもなく素晴らしい作家だが、朝井リョウがほぼ同世代をクリティカルに描いている一方で、麻布競馬場氏が今回描いた「Z世代」は、麻布競馬場氏より世代が下と言ってよく(麻布氏は1991年生まれ)、リアルな世代ではないが、ここまで書けるのかと感心した。
性格には、4話通して登場する中心人物の沼田は、作中で「Z世代」として描かれているより少し年上だから、麻布氏に近いと言っていいかもしれないが……。
さて。
フォロワーから、『麻布競馬場氏の「令和元年の人生ゲーム」面白いですか?』というメッセージがあったので、考える。
小説としては「面白い」。現代人の精神をクリティカルに描いていると思うし、一作目に比べて小説としてとても面白い。
しかし、お話として「面白い」かというと、微妙だ。基本的に、楽しい話ではない。出てくる固有名詞も、一部の人間にとっては優しくないだろう(より心に刺さるにはある程度の知識と行動範囲が必要だと思う)。だが、「面白さ」に快/不快と違う軸を添えることができるなら、この話は「面白い」。心が苦しくなるし、私は思い当たる節がある、ある種の愚かなエゴをもつ人間であるから、胸をかきむしられるようなところもあるが、私はこの小説が好きだ。
そうだ、面白いというより、「好き」が先にくる作品だ。
私はこの小説を読んでよかったと思うし、この小説を間違いだとは思わない。
……などとかっこうをつけて語ったが、まあ、ぶっちゃけ、この小説を「面白い」と断言できるほど、私は聖人ではないし、この小説に傷をつけられています、という回答になってしまうだろうか。
楽しい話を読みたいのならおすすめしませんが、普段の麻布氏のツイートを見ている+「この部屋から東京タワーは永遠に見えない」を読んで「好き」だと思ったなら、ぜひ読んでほしいと思います。(もっともっと具体的に言うと、窓際三等兵さんの"普段の"投稿をマイルドにしたものを想像して辟易したならやめた方がいいかもなあとは思います)
あと、朝井リョウ「何者」を読むときの精神力×0.7くらいは必要だと思います。
これは「面白い」「面白くない」とは関係ないのですが。
特に一話とか、「私はこういう男男関係のお話がねぇ!!!!!!大好きでねぇ!!!!!!!!このBLがすごい2024でしょうこんなのさぁ!!!!!!!!!」と大興奮しているのがばれるのは若干恥ずかしいです。